ギフト券プレゼント、このまま続けますか?~「来場予約特典」を考える

1.「まずWEBで情報収集」の行動定着で来場予約特典がモデルハウス誘引のフックに
予約特典による集客促進は、ネガティブな言い方をすれば「金券でお客様を呼ぶ込む」ことであり、この点が賛否を生む要因となっています。しかし、さまざまなビルダーの集客現場を見ていると「これまで未実施だった予約特典の開始によって来場予約が急増した」「特典金額を倍増したことで来場予約も倍増した」のような実例は多く、特典の有無・進呈金額の多寡が来場の件数に影響を及ぼしていることは事実です。特典自体の是非はさておき、来場予約の獲得においてフックになる施策であることは間違いありません。
予約特典が集客施策として定着した背景には、お客様の行動が「とりあえず近くの住宅展示場やモデルハウスへ行く」から「WEBで比較検討して気になるモデルハウスへ行く」へと変化したことが大きい。ビルダーはまずWEB上でお客様に選んでいただくことが必須であり、予約特典がランクアップを後押しする1つの材料になっていると言えそうです。また、近年ビルダーでも多用されるようになった刈り取り型WEB広告(来場予約などの反響獲得を主目的とした広告)と予約特典との相性が良いことも、この施策が定着した遠因と考えられます。WEBが集客の主戦場となった現状を鑑みると、予約特典が来場獲得に一定の効果をもたらす状況は今後もしばらく続くでしょう。
一方で「商品券を利用した集客は自社のイメージにそぐわない」などの理由から、予約特典を実施しないビルダーも一定数存在します。もちろん、自社との相性が悪いと考えるのであれば無理に実施する必要はありません。ただし、このスタンスを維持しながら安定的な集客を実現するためには「特典が無くてもお客様に選んでいただく」ための施策が不可欠です。具体的には、自社ホームページ・SNSの徹底的なブラッシュアップ、WEB内外での恒常的な認知・ブランディング施策などが挙げられます。
余談ではあるが「現在実施している予約特典を将来的に縮小したい」と考えているビルダーも、同様のブランド強化が必須です。これらの施策に取り組まず、かつ、予約特典に積極的でないビルダーは、現状では残念ながら集客に苦戦する可能性が高い。
2.課題は来場後の商談・成約歩留まり、適切な「+α」条件の設定が成否を分ける
予約特典を実施するビルダーの多くで課題に挙がるのが、来場後の商談・成約歩留まりです。成約どころかアポにもつながらないお客様が多いのであれば、せっかくの予約も無意味です。近年多くのビルダーが取り入れており、比較的効果があると思われるのが「事前予約のうえ来場で〇〇円、+αの条件達成で〇〇円」のように特典を複数のステップに分けるパターン。初回来場時の進呈額を抑え、+α条件に重きを置くことで、歩留まりを高めることが目的です。
あまり条件が多すぎるとお客様に敬遠されるケースもあるため、できれば2ステップ程度に抑えておきたいです。
+α条件には大きく2つのパターンです。1つは「来場前のアンケート回答」。来場予約いただいたお客様にアンケートを送付し、事前に回答を求めるものである。アンケートは来場予約時の自動返信メールにURLを記載して誘導し、モデルハウス初回来場時のアンケートと同等の質問項目にすることが多い。ビルダー側にとっては、お客様の詳細な情報や要望を事前に把握できるため、初回接客の精度を高められる点がメリットです。ただし次回アポを確約していないため、歩留まり向上には接客時の工夫が不可欠です。
もう一つの条件パターンは「次アポ」。多くのビルダーは特典対象となるアポを限定しており、モデルハウス再来場・完成見学会・セミナー・相談会・工場見学・住宅ローン事前審査・敷地調査などさまざまなパターンがあります。ビルダー側からみれば、前述の来場前アンケートと異なり確実に次アポを獲得できる点は大きなメリットです。ただしお客様側からみると、アンケート回答に比べてハードルが高い点は注意しておきたいです。自社の都合を優先しハードルの高すぎる条件を設定すると、来場予約につながらない可能性があります。また、自社の商談~成約ストーリーに合わない次アポを設定した結果、営業現場で「アポが取りにくい」「次アポまでは取れるけれどその先に進まない」という課題が発生するビルダーもあるようです。自社の勝ちパターンを把握したうえで、お客様に無理な印象を与えない適切なハードルを設定したいところです。
3.過剰な"ものもらい"対策はNG お客様に「行きたい」と思っていただけるPRを
最後に触れておきたいのが、予約特典において必ずと言って良いほど問題となる、いわゆる"ものもらい"の存在。購入意思が無くプレゼントだけを目的に来場するお客様を、完全にブロックすることはほぼ不可能です。ただし、前述の+α条件はある程度の抑止力になるでしょう。
一部のビルダーでは、ものもらい対策に主眼を置いた結果、特典付与の条件を厳密に規定し、ホームページ上掲載している。取り組み自体は決して悪いことではないが、あまりにも条件が多すぎるケースや、ビルダー側がお客様を選別するような「上から目線」の条件を掲載するケースも散見されるのは気になるところです。
過剰な対策の結果、本来お客様になり得るべき方にも敬遠されてしまう可能性がある点は注意が必要です。
予約特典を実施する最大の目的は「来場数を増やし、その先にある商談・成約数を増やすこと」成果を最大限化するためには、適切なストーリー設計と、お客様に「行きたい」と思っていただけるPR活動が不可欠です。
※株式会社 住宅産業研究所「TACT」参照

